![[Pasted image 20250420132824.png|200]] ## なぜ回帰分析では不十分か 血糖値測定の例を考えてみましょう。ある病院では現在、試薬Aを使用していますが、新しい試薬Bへの切り替えを検討しています。品質チェックのため、複数の患者さんの血糖値を両方の試薬で測定したところ、試薬Bは常に試薬Aより約10mg/dL低い値を示すことがわかりました。 | 患者 | 試薬A (mg/dL) | 試薬B (mg/dL) | 差 (A-B) | | --- | ----------- | ----------- | ------- | | 1 | 95 | 85 | 10 | | 2 | 126 | 116 | 10 | | 3 | 187 | 177 | 10 | | 4 | 210 | 200 | 10 | | 5 | 143 | 133 | 10 | | | (以下省略) | | | ### 回帰分析の問題点 この状況で回帰分析を行うと、二つの試薬の測定値の「相関係数 (R)」は非常に高くなります。これだけを見ると、「両方の試薬は同様の結果を示している」と誤解する可能性があります。しかし実際には、試薬Bは常に10mg/dL低い値を示しており、臨床的には「一致していない」と判断すべきです。 つまり、相関係数は二つの検査の「関連性の強さ」を示すだけで「一致度」を示すものではないのです。 ## ICC + Bland-Altmanプロットの優位性 一方、ICCはこの状況で低い値を示し、二つの測定値が一致していないことを明確に示します。 臨床検査において本当に重要なのは、「二つの試薬が同じ値を示すか」という一致度です。そのため、以下の組み合わせによる評価が推奨されます: - **Bland-Altmanプロット**: 測定値の差を視覚的に評価し、系統的バイアスやばらつきのパ - **ICC(級内相関係数)**: 測定値の真の一致度を0~1で数値化する この組み合わせにより適切に評価でき、臨床的に意味のある判断が可能になります。新しい試薬の導入や測定方法の変更を行う際には、単なる相関分析ではなく、一致度を直接評価できるこれらの手法を用いること検討してください。 もちろん、使用方法を十分理解したうえで回帰分析を行うことは可能です。 ## 参考 - [[R - Bland-Altman plot をつくってみよう]] についての解説はこちら - [[R - ICC を計算してみよう(試薬評価研究)]] の解説はこちら